3月23日、国土交通省が発表した公示地価、全国における住宅地・商業地・工業地の全用途平均が前年比0.5%のマイナスとなりました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出自粛や訪日観光客の減少により飲食店や小売店などの不振が公示地価下落の大きな要因となっています。
昨年は4月から6月に行われた緊急事態宣言の影響もあり、経済活動が停滞し、半年前に公開された基準地価も大きく下落しました。
リーマン危機や東日本大震災の影響が出た2009~2012年の2.6~4.6%下落に比べると下落幅は小さいですが、主に商業施設において景気に比例して下がったことには変わりありません。
一方で、在宅勤務を導入する企業が増えたことで新たな住宅需要もあります。
都市近郊で中古マンションや別荘などを求める動きもあり、移住や二拠点住居などの新たなニーズを取り込むことで公示地価が上がった地点も出ています。
また、ネット通販の利用拡大に比例して物流拠点を擁している工業地でも公示地価が上昇した地点が見られます。
そもそも公示地価とは、地価公示法に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が毎年3月下旬に公表する土地評価による「標準地」の価格のことを言います。
地価公示では、全国で選定された3万以上の地点の標準地について、毎年1月1日を基準日として各標準値につき2名以上の不動産鑑定士等の鑑定評価を求めます。
そして、求められた価格を土地鑑定委員会が判定し、毎年3月下旬に公示する流れとなります。
では、この公示価格はいつ活用できるのでしょうか?
よくある例としては、土地の売却価格を決める際の参考として利用したり、一戸建てやマンションの購入時に価格を比較する材料として利用したりするのが一般的です。
また、住宅を購入するエリアを決める時に公示価格に対しての住宅の価格を比較することで、価格水準の比較検討にも活用することができます。
その他に、公共用地の取得価額の選定基準にも活用されています。
さて、これらを踏まえて矢口周辺の公示地価はどう変化したでしょうか?
まずは矢口2丁目、OKストア近隣の一戸建てです。
小規模一般住宅や事務所等が混在する住宅地域に位置する住宅地である標準地の公示地価は昨年と比較して1.1%下落しました。
住宅地の全国平均の0.4%下落と比べると下落幅が0.7%大きくなっています。
この地域は都心に近く通勤・通学においても利便性が高い地域であるため、平成29年から令和2年の地価公示の前年比は2.5~3.3%増でした。
しかし、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務の割合が増え、通勤のための需要も若干減少したために下落に転じたといった形です。
次に多摩川1丁目、矢口の渡商店街にある店舗兼共同住宅です。
低層の店舗兼共同住宅等が建ち並ぶ近隣商業地域に位置する商業地兼住宅地である標準地の公示価格は昨年と比較して1.2%下落しました。住宅地の全国平均と比べて下落幅は0.8%大きく、また商業地の全国平均の0.8%下落とも比較しても下落幅は0.4%大きい結果となりました。
矢口の渡商店街には店舗兼住居の敷地も多くあり都心へのアクセスも良いことから会社員への需要も大きく、平成29年から令和2年の地価公示の前年比は2.7%、2.6%、4.2%、6.9%と右肩上がりで推移していました。
しかし、前述した在宅勤務に加え、不要不急の外出が減ったことにより商店街の人通りも減少し、今年は下落に転じました。
最後に多摩川1丁目、環八通り沿いにある事務所兼住宅です。
店舗、事務所、共同住宅等が混在する商業地域に位置する工業地兼住宅地である標準地の公示地価は昨年と比較して0.5%下落しました。
住宅地の全国平均と比べて下落幅は0.1%大きく、また工業地の全国平均の0.8%上昇と比較すると変動幅だけ見ても1.3%も差が出る結果となり、上昇と下落の違いまで見られました。
第二京浜沿いの一帯は商業地域という分類がされながらも周辺の商業繁華性はあまり高くありませんが、高容積率を活かした事業用地やマンションの開発が可能なことから、地縁性のある企業やマンションデベロッパー、賃貸用収益不動産を求める投資家などからの需要があると評価されています。
それゆえ、平成29年から令和2年の地価公示の前年比は2.6%、3.0%、4.6%、7.3%と右肩上がりで推移していました。
新型コロナウイルスの影響で先行き不透明になったため今年は下落に転じたものの、他の2地点と比較して下落幅が低く済んだのはそういった商業地域ならではの要因が関係しています。
いずれにしても、新型コロナウイルスの影響は大きいですね。
地価の回復、ひいては経済の回復には早期の収束が求められます。
もちろん安心した生活のためにも、できる予防・対策を根気強く続けていくことが大事になってきますね。