
埼玉県八潮市で起こった道路陥没事故は日本中を震撼させた事故として記憶に新しいですが、その原因の一つとして考えられているのが下水道管の老朽化と腐食です。事故現場の下水道管は1983年に敷設されたもので、すでに42年が経過していたそうです。
同じように築年数の長いマンションなどでは下水道管の老朽化が進み、特に築40年超のマンションでは水漏れトラブルが起きやすいと言われています。2023年度のマンション総合調査によると、建物の不具合によるトラブルでは「水漏れ」が20%と最多となりました。築年数が長いマンションが増えるなか、給排水管の更新工事が急務となっています。
築年数の長いマンションでは金属製の給排水管が多く、経年劣化で腐食するため、水漏れトラブルに繋がりやすいです。工事には億単位の費用がかかりますが、設備を刷新できれば建物の寿命を延ばすことができ、資産価値が高まる可能性もあります。
金属製の給排水管の工事には「更生工事」と「更新工事」の二種類があります。更生工事は内部のさびを取り、十数年ほど管を延命させる工事です。一方、更新工事はさびない樹脂製の給排水管に取り換える工事で、樹脂製にすれば追加の大工事は不要となります。マンションの規模などで費用は異なりますが、更新工事の場合、床をはがすなど大規模になるため、1戸当たり100万〜300万円と高額な費用がかかります。更新工事は費用が高額となりますが、住戸内の給排水管工事は1回で終わらせた方が結果として合計費用は抑えられると言われています。とはいえ、高額な工事を実施するためには修繕積立金を数万円値上げしなければならない場合もあり、住民間の合意形成が難しく、工事を進められない事例も発生しています。給排水管は専有部分と共用部分にまたがることから、更新工事をどこまで手掛け、誰が費用を負担するかが論点になります。費用はかさみますが、管理組合が専有部分も含めて更新工事を担うと建物全体の価値を高めやすいと言われています。専有部分の工事を費用も含めて管理組合が手掛けるには、長期修繕計画の修正や管理規約の改定が必要となります。総会の特別決議として、組合員総数と議決権総数でともに4分の3以上の賛成を得なくてはなりません。
工事により、資産価値が上がったケースもあります。築45年の神奈川県横浜市の「霧が丘グリーンタウン第一住宅」は、2015年に給排水管の全面的な更新工事を終えました。大規模な水漏れ事故の発生がきっかけとなりましたが、工事により新たな事故を防ぐことができ、設備刷新への住民の理解が高まったといいます。さらに2021年には大規模修繕工事で給湯器の省エネ化や窓の断熱化などを完了したことで、設備が最新となり、若い世代の入居も増えているそうです。物件の売却価格は給排水管工事前に比べ200万〜300万円ほど上昇しました。
築51年で688戸の埼玉県三郷市の「みさと第一住宅」では漏水事故が多発し、建物を長く使い続けるには給排水管の更新工事が必要と考えた住民が準備委員会を立ち上げ、5年かけて準備しました。2024年3月に約2年半の更新工事を終えました。委員会は住民説明会を複数回開催し、工事の流れや意図などをまとめた広報紙やDVDを配布したほか、説明会に出られなかった人には個別訪問をするなどで合意形成に結びつけたということです。
相続放棄され、弁護士の管轄となっていた部屋も管理組合が交渉して工事を手掛けたところ、設備が刷新されたことで部屋の競売が成立したそうです。未納だった修繕積立金も回収できました。
給排水管の更新工事には多くの資金が必要になるため、工事の方向性を決められない場合もあるかもしれません。修繕積立金だけで賄えない場合に活用できるのが、金融機関のローンです。中でも代表的なのが、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」です。保証料が必要ですが、法人格がなくても借りられるなど、マンション管理組合が使いやすいように設計されています。固定金利で、2025年3月時点の融資金利は返済期間10年以内で年0.97%となっています。
融資金利の優遇制度があるのも特徴です。例えば、省エネ対策の工事を手掛ければ年0.2%、同機構の「マンションすまい・る債」を購入・運用中であればさらに年0.2%金利が引き下げられます。最大の下げ幅は年0.6%で、下限は0.1%となっています。自治体によっては、住宅金融支援機構の融資の金利に対して助成制度を設けているところもあります。東京都では最大で1%の利子分が支給されます。こうした制度を組み合わせれば、実質無利子で資金を借りることができるのです。融資を受けるには、修繕積立金が1年以上定期的に積み立てられ、滞納割合が原則10%以内など、条件があります。住宅金融支援機構によると、管理規約の改定などが必要な場合、融資が決まるまで半年ほどかかることもあるそうなので、検討している管理組合は早めに検討したいところです。2023年度の融資の受理金額は前年度比37%増の約196億円と利用額も増加しています。
【2025年3月1日 日経新聞より抜粋】
高経年のマンションが増える中、給排水管の老朽化は大きな問題です。
高額な費用がかかるため住民の合意形成が難しい場合もありますが、マンション管理組合向けのリフォーム融資なども活用しましょう。水漏れなど問題が起こる前に早めの計画をおすすめします。
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