空き地を活用、容積率緩和や固定資産税減免も

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2024年08月15日

空き地を活用、容積率緩和や固定資産税減免も

全国で空き地が増加

総務省の住宅・土地統計調査によると、2018年に世帯が保有する空き地は全国で1364平方キロメートルに及びます。2008年と比べると、2倍を超えています。東京都の面積およそ2200平方キロメートルに対し、6割程度に相当することになります。
近年は郊外地域で住宅の空き地を資材や廃品置き場に変える動きも見られます。こうした事例は周囲の生活環境の悪化につながる恐れがあるため、国交省は売買など土地取引の情報を事前に地方自治体に届け出なければならない仕組みを検討しています。自治体が取引前から情報を得られるようにして、適正な利用につなげる意向です。

国交省の空き地対策

建築基準法に定められている規定として、商業施設やマンションを空き地と一体開発すれば容積率を緩和するという「総合設計制度」と呼ばれるものがあります。商業施設やマンションを空き地と一体開発することで空き地が有効活用できるのに加え、事実上敷地面積が増えるため、より大規模な開発が可能になるのです。 
総合設計制度について建築基準法第59条の2に以下の通り定められています。
 
“敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例”
第59条の2 その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建蔽率、容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率又は各部分の高さは、その許可の範囲内において、第52条第1項から第9項まで、第55条第1項、第56条又は第57条の2第6項の規定による限度を超えるものとすることができる。
2 第44条第2項の規定は、前項の規定による許可をする場合に準用する。

総合設計制度により緩和される容積率

容積率とは商業ビルや住宅といった建築物の延べ床面積の敷地面積に対する割合を示すものです。例えば容積率100%ならば、建築物が建てられた敷地の広さと、延べ床面積が同じであることを意味します。建築基準法などで住居や商業、工業など土地利用の用途に応じてその上限が定められています。
飲食店や百貨店が集まるところは「商業地域」と規定されます。国のルールでは容積率を最大1300%に設定できますが、実際には地方自治体が都市計画に基づき、経済活動や生活環境などのバランスをとりながら決めています。
総合設計制度は、一定規模以上の敷地面積や、一定割合以上の空き地を有する建築計画について、公共的な空き地空間の確保による市街地環境の整備改善などを目的として創設されています。土地取引における重要事項説明のうち、建築基準法第59条の2第1項については、「敷地内に”政令”で定める空き地」と「敷地面積が”政令”で定める規模以上」の建築物であることと定められています。その上で、特定行政庁が交通、安全、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、建蔽率・容積率・建築物の高さに関して総合的な配慮がなされていることにより、市街地の環境の整備改善につながると認めて許可した場合には、容積率と高さについては、許可の範囲内で緩和することができるものです。
なお、留意点として、特定行政庁は許可を行う前に建築審査会の同意を得ることが必要です。

固定資産税減免も検討

国土交通省は容積率の緩和だけでなく、固定資産税の減免も検討しています。新たな優遇策の対象とするのは所有者が明確な空き地です。空き地と一体での開発に応じた場合に空き地側の固定資産税を優遇する仕組みです。空き地の緑地や農園などへの転用を想定しています。また施設と空き地の距離がある程度離れていても、空き地を事実上施設の敷地とみなすようにする方向です。
今後、国土交通省が優遇策の詳細をさらに検討し、早ければ2025年の通常国会に関連法案を提出して早期の実施を目指しています。政府・与党はこれまで所有者が不明な土地についての法整備は進めてきたものの、所有者が明確な空き地に関しての対応は遅れていました。事業を推し進めるため、空き地の利活用や管理を担う組織を「土地利用・管理円滑化法人」として法的に位置づけることも視野に入れています。空き地の所有者と取得を希望する事業者の橋渡し役になってもらう考えです。

 【2024年7月21日 日経新聞より抜粋】

まとめ

全国で空き地が増加しています。国交省は空き地周辺の生活環境の悪化を防ぎ、地域を活性化するため、容積率の緩和や、固定資産税の減免など様々な仕組みを検討しています。
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