空き家が急増するとともに、住む人がいなくなった実家をどうするか悩む人が増えています。総務省が4月末に公表した住宅・土地統計調査によると、2023年10月時点の空き家は900万戸にのぼります。住宅に占める割合は13.8%で7戸に1戸が空き家の計算です。地方はより深刻で、和歌山県や鹿児島県など5県では2割を超えており、戸数・割合ともに過去最高です。空き家を有効活用する動きは広がっているものの、増加が止まりません。なかでも問題なのは、「放置空き家」です。賃貸や売却の予定がなく、別荘などでもない放置空き家は2023年には385万戸と5年前から37万戸も増加しました。相続した後に長い間、そのままにしているような物件で「所有者不明家屋」の予備軍といえます。
4月から相続のルールが大きく変わりました。そのうちの1つが、相続登記の申請の義務化です。相続人は、相続の開始と相続により不動産の所有権を得たことを知った日から3年以内に当該不動産の名義変更を行う義務が課せられます。期限内に相続登記ができない場合、緊急措置として「相続人申告登記」をしておけば問題ありませんが、遺産分割協議がまとまった後に改めて相続登記を行う必要があります。正当な理由がなく相続登記が行われない場合、相続人は10万円以下の過料を科されることがあります。
気を付けたいのは、4月より前に相続で取得した不動産も登記の義務化の対象となることです。登記簿上の名義は先代や先々代のままということもよくあります。所有・管理する不動産の名義については早めに登記情報を確認しましょう。
また京都市など「空き家税」を導入する自治体もあります。空き家を放置すると景観や治安が悪化するだけでなく、災害時の復旧・復興の妨げになりかねません。窓ガラスが割れているなど管理不全な状態と判断された場合、行政の勧告を無視すると固定資産税の減額措置が解除されます。
国は空き家対策特別措置法を改正するなど、対策に乗り出しています。空き家を持つ負担感は強まっているのです。
空き家を解消するにはどうすればいいでしょうか。空き家活用の和田貴充社長は「親が元気なうちから実家をどうするか相談しておくことが大事」と話します。同社は全国の自治体と連携して空き家に関する相談や物件紹介などを請け負っています。
実家を巡るトラブルとして、名義人である親の病気が進行し、売却や賃貸などの手続きが取れなくなるケースがあります。きょうだい間で意見が食い違い、そのまま放置という事例も数多く存在します。
元気だからと実家について話すのを嫌がる親も多いですが、認知症が進行すると売却に向けた手続きがストップしてしまいます。「元気なうちに思い出話などを交えながら談笑し、流れで実家をどうしたいのか聞きだしておけば後々スムーズになる」と和田さんは話します。
家を売却するか解体するか方向性が決まったら、自治体や空き家をサポートしている団体に相談しましょう。販売エリアが狭く買い取り手が現れない場合は地域外の事業者に依頼するのも一つの方法です。いずれにせよ空き家が急増している今、早い段階から動き出すに越したことはありません。
和田さんは「同時並行で不要品の処分を進めると後が楽になる」といいます。思い入れのあるものでも保管場所がなければ捨てざるを得なくなることが多いです。ゴミ処分を業者に依頼した場合には多額の費用がかかります。立派な机やたんすなどはフリマアプリなど個人間で不用品をやりとりするサイトに掲載すると、欲しい人が引き取りに来てくれる場合があります。一緒に家財道具を処分していけば、いざ実家をどうするかについても話しやすくなるでしょう。
老朽化が進んでいて解体する場合には自治体の補助制度が使えるかもしれません。自治体によって補助額や利用可能な物件の条件などはバラバラです。解体後に一定期間無償で貸与するのが条件のところもあります。
他の選択肢はどうでしょうか。NPO法人空家・空地管理センターによると、相続放棄は2023年のルール改正で、相続放棄後の管理責任についてそれまで曖昧だったものが、実家の同居人などに限定されるようになりました。なお、土地のみを相続放棄することはできず、預金など他の資産も相続できなくなりますので注意が必要です。
国に土地を返す「相続土地国庫帰属制度」もありますが、更地にした上で10年分の管理費相当額を納めるなど負担が大きく、使える土地の要件も厳しいです。売却するにせよ解体するにせよ、あまり期待はしない方が良いかもしれません。
【2024年7月24日 日経新聞より抜粋】
空き家が急増するとともに、住む人がいなくなった実家をどうするか悩む人が増えています。家族が元気なうちに相談して方向性を決められるのが理想ですが、スムーズにいかない場合もあるかもしれません。
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