路線価が29都道府県で上昇

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2024年07月29日

路線価が29都道府県で上昇

路線価が上昇傾向に

新型コロナウイルス禍からの経済活動の回復が進み、土地の価格を示す路線価が上昇しています。国税庁が1日発表した2024年1月1日時点の路線価は、29都道府県で平均値が上昇し、前年の25から4増えました。横ばいとなったのは2県、下落は16県でした。全国平均は前年比2.3%の上昇で、伸び率は前年から0.8ポイント拡大しました。コロナ禍前の2020年の1.6%を上回り、比較可能な10年以降で最も高い結果となりました。路線価とは国や自治体が定期的に公表する土地の公的な価格の一つです。主要道路に面した土地1平方メートルあたりの標準価格で、相続税や贈与税の算定基準となります。

全国トップは福岡県

平均上昇率が5.8%と、全国トップだったのは福岡県でした。同県内の最高路線価である商業施設「福岡パルコ」周辺では、ビルの高さや容積率の規制を緩和する市の再開発促進策「天神ビッグバン」が進行しています。12月には一等地である旧福岡ビル跡地に「ワン・フクオカ・ビルディング」が竣工します。オフィス賃料の目安は1坪(約3.3平方メートル)あたり月額3万2000円で、天神地区では最高水準となっています。
上昇率が全国で2位だった沖縄県(5.6%)は全地域で広く路線価が上がりました。飲食店を中心に店舗賃料が伸びたことで、地価上昇につながりました。リゾートホテルの開業が相次ぐ宮古島で特に上昇が目立っています。
全国524の税務署別に最高路線価の上昇率をみると、上位には観光や半導体工場で盛り上がりを見せている自治体が多く食い込みました。前年比32.1%上昇した長野県白馬村が1位となりました。スキー場への外国人観光客の増加で、周辺ではホテル開発が進んでいます。2026年以降には、シンガポールを拠点とする高級ホテル「バンヤンツリー」の開業も予定されています。
税務署別での路線価2位は熊本県菊陽町で24.0%上昇しました。台湾積体電路製造の進出で人の流れが増え、住宅新築などが地価上昇のきっかけとなっています。周辺ではJR新駅設置や大型商業施設の開業なども計画されています。同町では台湾積体電路製造の国内第2工場も今年末から建設が始まる見込みです。

路線価上昇の理由は

路線価上昇の理由の一つに、訪日外国人、すなわちインバウンドの増加や各地で進む再開発、半導体工場の誘致が挙げられます。日本政府観光局によると、2023年の訪日客数はコロナ禍前の8割まで戻りました。直近は2024年3月から5月にかけて3カ月連続で客数は300万人を超えています。
もう一つの理由として、コロナ禍で落ち込んだオフィス需要の回復があります。企業は単に出社重視の姿勢に回帰するだけでなく、福利厚生などの一環で好条件のオフィスへの移転や拡張する流れが続いています。オフィスビル仲介の三鬼商事によると、東京都心5区の空室率は2021〜2023年に6%台半ばまで悪化しましたが、足元の2024年5月は5.48%と緩やかに回復しています。2024年は新規の供給が少ないという面も一つの要因です。
都市部ではマンションの需要も大きいです。不動産経済研究所によると2023年度の首都圏の新築マンションの1戸あたりの平均販売価格は7566万円で、前年度比9.5%上昇しました。東京23区に限れば、平均価格は1億円を超します。

金利上昇との関係は

2023年は日銀の政策変更や米金利の上昇で、長期金利は上昇傾向にありました。金利が上昇すれば、一般的には借り入れが難しくなり、不動産の価格には下落する傾向にあります。ただ足元では不動産投資は堅調さを維持しています。
三井住友トラスト基礎研究所の坂本雅昭投資調査部門長は「日本経済や企業への成長期待は高く、投資家は不動産の賃料も上昇すると見込んでいるため、金利の上昇が不動産価格に与える影響は小さい」と指摘します。
米MSCIのデータを三井住友トラスト基礎研究所が集計したところ、世界の不動産取引額に占める日本の比率は、2024年1〜3月期に7%台まで高まりました。海外で金利が高止まりする中で、日銀が利上げを進めても比較的低金利な日本には海外マネーが流入しやすい状況です。今後は海外マネーの動向が日本の不動産市場を左右していくと考えられます。
不動産サービス大手のジョーンズラングラサールによると、2024年1〜3月の都市別不動産投資額で日本の首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)は76億5000万ドル(約1兆2000億円)で、ニューヨークやロンドンを上回り首位となりました。
ジョーンズラングラサールの大東雄人リサーチ事業部シニアディレクターは「2023年は金利上昇への懸念から海外勢が投資を手控える動きがみられた。海外勢の潜在的な投資意欲は引き続き高く、2024年は海外からの投資資金も多く流入するのではないか」と指摘します。
【2024年7月1日 日経新聞より抜粋】

まとめ

新型コロナウイルス禍からの経済活動の回復が進み、各地で土地の価格が上昇しています。日本経済や企業への成長期待は高く、長期金利は上昇傾向にありますが、不動産価格も引き続き上昇が続くと予想する意見もあるようです。

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