新型コロナウイルス感染拡大により思わぬ影響が広がっています。
それが、最近耳にする「ウッドショック」と呼ばれる問題です。
ウッドショックとは、アメリカや中国で住宅建築が急増し、木材の需要が急増し価格も高騰したことで、需要と供給のバランスが崩れ、価格の高騰に歯止めがかからない状態になっていることです。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の木材先物価格チャートでは、昨年4月(264ドル/1000ボードフィートあたり)から上昇傾向に転じ、最新の5月17日時点で、1327ドルとなった。
1年余りで5倍の価格高騰ということになります。
これは異常事態だと言われています。
では、なぜこうなったのでしょうか?
以下に、3点挙げます。
アメリカで品不足が原因で木材価格が高騰しています。
超低金利に加えて、コロナでリモートワークが普及し住宅ブームが発生しました。
資材高で新築価格や家賃が上昇し始めており、日本にもこの「ショック」が波及しました。
アメリカは買い替え時により良い住宅を目指すので中古から新築住宅を注文する人も多く、昨年より3割上回るペースとなっています。
コロナ禍により物流や貿易も混乱に陥っています。
当初はコロナ禍ということもあってコンテナの量を減らしましたが、巣籠りによって住宅需要が増え、コンテナの数が急激に増えることになりました。
人口が多く需要の多いアメリカと中国の2か国を中心としたコンテナを回しているため、日本向けのコンテナ確保が厳しい状況になっています。
ただ、いくら木材があってもコンテナがなければ日本まで運ぶことができないため、ますます日本に木材が届きにくくなっています。
現在日本の国産木材自給率は37.8%(2019年時点)となっています。
日本は先進国でも有数の森林保有国でありながら梁材と柱材の自給率が低く、生産体制が脆弱であるため、輸入材の不足分を補えず混乱に陥っています。
木造住宅は部材が1本足りないだけで建てられなくなります。
家づくりで用いる梁材や柱材など全ての部材を、国産材を使って安定価格で安定供給できる体制の構築こそが、ウッドショックの早期解決と再発防止のためには欠かせないのです。
こうした状況で懸念されるのは、住宅産業への影響です。
日本は木材の約6割を輸入材に頼っており、建材では半分の割合を占めます。
2000年以降、国産材の割合も増加傾向にあるが、輸入材は強度が強く、頼らざるを得ない面もあります。
2020年コロナ禍で輸入量を減らしたが、それが思いのほか必要となり、2021年に輸入量の増加を試みるが既に市場は荒れていました。
品質にうるさい日本は取引先にとって面倒であり、少ないパイを奪い合って日本は買い負けてしまったのです。
木材のおよそ6割は海外の輸入材に依存しています。
現状日本の林業だけでは国内の産業をまかなえないので海外の影響を強く受ける立場になっています。
木は植樹してから伐採までに30年~40年かかります。
現状すぐに対策出来ることでもないし、国産材を使用するにも山の斜面での管理にはお金と時間、労力が必要になります。
ただ9年連続で国産材の自給率が高くなっており輸入材の量が減っているので、わずかではあるが国産材を使用しようとする動きもあるようです。
そんな中、大手分譲住宅会社3社(三栄建築設計、オープンハウス、ケイアイスター不動産)が21年4月13日に共同で設立した「日本木造住宅分譲住宅協会」という取り組みを始めました。
協会は先に触れた課題の解決の一端を担い、日本の住宅及び不動産市場が今後国内産の木材に目を向けるきっかけを作ることが大きな目的となっています。
そのためにも高品質の国内産木材を海外産に負けない価格帯で安定供給させる仕組みを創ることが必須だと考え、木材生産者や林業とのサステナブルな(持続可能な)取引サイクルを生み出すそうです。
協会として設立3社の本業でのビジネス上の木材取引やCSR理念などに沿った人材育成、技術提供を行うことの他、「木材調達量の100%、年間33,000本強の樹木を山林に還元する植林活動」を実施する計画を立てています。
これにより「切る」「使う」「植える」「育てる」という原資が住宅メーカとしては今までかつてなかった独自サイクルを創り出すことが可能だと考えており、この仕組みを自発的に仕掛けることこそが、日本の林業及び環境問題に対し協会及び3社が今できる最良のスキームであると確信しているとのことです。
以上をまとめると、
木材の需給が逼迫して価格が高騰する「ウッドショック」に住宅業界が強い危機感を抱いています。
根本的な発生原因は、輸入に依存しすぎたからではないかと考えます。
家づくりで用いる全ての部材を安定価格、安定供給できる体制の構築が「ウッドショック」の早期解決のために欠かせないと思います。
コロナが収束した後、どう影響出るか気になるところです。