老朽マンションの再生を後押し、改修・解体に新たな税優遇

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2024年09月30日

老朽マンションの再生を後押し、改修・解体に新たな税優遇

老朽化マンションが増加

全国で老朽化マンションが増加しています。建物と居住者双方の高齢化が進み、「2つの老い」による問題が注目されています。国交省の推計では築40年以上経過したマンション数は2023年末の137万戸から2033年末に274万戸、2043年末には464万戸と3倍以上に増える見通しです。修繕工事を適切に実施しなければ、外壁がはがれ落ちるといった危険が高まります。老朽化が進んでも、住民の合意形成ができず、危険を放置したままとなれば、最終的に行政側で解体せざるを得ない事態も予想されます。費用を回収できなければ、地方自治体の負担が増す恐れもあります。多くの問題が顕在化しているなか、税制と予算の両面から対策を進める必要性が高まっています。

2023年度税制改正では利用が進まず難航

2023年度税制改正の際、国交省はマンション長寿命化促進税制を施行しましたが、利用が進んでいません。大規模修繕したマンションの固定資産税を優遇する制度で、老朽マンションの修繕を促す政策として期待が高かったものの、要件の厳しさがハードルになっています。国交省によると、2023年11月末までに申請件数は10棟にとどまっており、現時点においても利用は大きく増えていないとみられます。税優遇の期限が迫るなか、国交省は8月末までの総務省への税制改正要望で期限の延長を求める調整に入りました。
マンション長寿命化促進税制における税優遇は老朽化したマンションの屋根や床の防水のほか、外壁の塗装といった大規模修繕工事をした場合に、100平方メートル分までの建物部分について翌年度の固定資産税を軽減するものです。軽減割合は6分の1〜2分の1の範囲内で、各自治体が条例で定めます。
修繕工事が進まない要因として、積立金の不足があげられます。国交省の2023年度調査では、積立金が不足しているマンションは全国で36.6%に上りました。税優遇が適用されるには国が定める基準額になるまで毎月の負担額を引き上げる必要があります。ただ、住民の間で合意に至らず、調整が難航するケースが多くあるようです。

2025年度税制改正では新しい税制優遇を求める

国土交通省は2025年度税制改正で、老朽マンションの全面改修や解体への税制優遇を求める予定です。住民らで設立する事業組合が改修によって増えた区画や解体後の敷地を売却した場合、その収益を非課税にする制度です。
古くなったマンションを巡っては、現在も建て替え時に増えた部屋の売却益や所有権を移転する際の登記にかかる法人税、法人住民税、事業税、事業所税などを減免する措置があります。これを全面改修や解体などにも適用できるようにするのです。
対象としてマンションの柱や梁(はり)といった構造部分を残して1棟丸ごとリノベーションする手法や、建物を取り壊して敷地を事業者に売却する方法などを想定します。期間を定めない、いつまでも続く恒久的な優遇措置とします。
マンションに関しては、早ければ秋の臨時国会で権利関係を定める区分所有法の改正に向けた議論が始まります。1棟丸ごとのリノベーションや建物を取り壊しての敷地売却が一定の条件を満たせば所有者の4分の3以上の賛成で決められるようになる見通しです。
また国交省は2025年度予算案の概算要求で管理が行き届いていないマンションの解体を支援するための予算も求めました。マンションの管理組合が取り壊しを決めた場合、国交省と自治体が必要経費の一定額を補助する内容です。
解体を判断する前段階で自治体が助言のために管理組合へマンション管理士を派遣する費用補助の経費も要求しました。老朽化が進めば外壁が倒壊するなど周辺地域に悪影響を与える恐れがあるため、自治体や居住者に早期の解体を促します。
これらの制度変更により、老朽マンション対策を税制面から推進していく予定です。
【2024年8月5日/8月31日 日本経済新聞より抜粋】

まとめ

老朽化したマンションの修繕工事や解体工事を適切に実施できるよう、国交省は税制改正を進めています。住民の合意形成が難しい場合、調整が難航するケースもありますが、外壁がはがれ落ちるなどの危険が生じる前に適切な対応が求められます。
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