不動産を相続対策に活用するには

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2023年05月25日

不動産を相続対策に活用するには

相続税の負担を大きく減らす節税方法として知られているのが、不動産を活用する方法です。どうして不動産を購入することで節税できるのでしょうか。

不動産が相続対策になる理由

相続税評価額が時価よりも下がるため

不動産が相続税対策になる理由は、相続税評価額の引き下げという仕組みを利用できると法律で決められているからです。不動産は売却した場合の価格(時価)より低い相続税評価額がつけられるという評価方法が採用されています。
例えば、1億円の預金を相続した場合の課税対象は1億円です。しかし、時価1億円の不動産を相続すると評価額は数十%減額され、数千万円ほどに抑えられます。土地であれば20〜30%、建物であれば30〜70%に評価額を抑えることが可能です。相続税には、相続した財産の評価額が高くなるほど税率も高くなるという累進課税方式が採用されているため、相続評価額を低くすることで相続税を軽減できます。

小規模宅地等の特例で評価額が下がるため

自宅の相続時に土地の評価額を下げて相続税負担を抑える制度に「小規模宅地等の特例」があります。現預金は残高が評価額になりますが、自宅土地(居住用宅地)の評価額は特例で80%下げられ節税効果が大きいです。特に恩恵を受けやすいのが、都市部に住み、相続財産は自宅と預金数千万円という中流層です。
どれくらい節税できるのでしょうか。被相続人が高齢の母親で財産は自宅5500万円(土地5000万円、建物500万円)、預金2000万円の計7500万円、相続人は同居の子(長男)という例をみます。
母が亡くなった際の相続で特例を利用すると、自宅の土地の評価は80%減の1000万円に下がる。建物と預金も含めた相続財産の評価額は3500万円と相続税の非課税枠(3600万円)を下回り、長男に相続税はかかりません。一方、特例を利用しないと相続財産は7500万円で、非課税枠を超える3900万円に課税され、相続税は580万円の計算です。
【2023年4月4日 日経ヴェリタスより引用】
現金には小規模宅地等の特例のように大幅に相続税評価額を引き下げてくれるような特例はありません。不動産は、ただでさえ現金よりも相続税評価額が低いですが、小規模宅地等の特例のような制度によってさらに時価とのギャップを生むことができるため、節税効果が非常に高い財産となっています。

借入金を有効に活用できるため

土地活用は借入金を有効に活用できるため、相続税の節税効果があります。借入金はマイナスの現金ですので、相続時の残額がそのままマイナスされます。
被相続人の財産の中に借入金が残っていることで、被相続人の全体の財産の課税標準額が下がります。土地活用による相続税対策は、この借入金が財産圧縮に与える影響が大きいです。土地活用で活用する借入金は、基本的に返せる無理のない借入金ですので、相続税対策では借入金をわざと残すようにします。無理なく返すことができ、ローン残額が大きくなる借入金というのは、土地活用の借入金以外にはなかなか存在しません。
土地活用で利用するローンは相続対策に都合の良い借入金であるため、積極的に借入金を使って土地活用を行う人は多いのです。

不動産を相続税対策に活用する方法

購入した不動産を賃貸にする

1つ目は、購入した不動産を賃貸にすることです。賃貸物件は借家権によって、相続税評価額を下げられます。借家権は借地借家法で規定されている、賃貸物件の借主保護制度のこと。貸主が一方的に契約更新を拒否したり、借主の立ち退きを主張したりしたとしても、正当な理由がなければ認められないという制度です。借家法によって借主の立場は守られますが、その分建物を所有している貸主が建物に対して持っている権利は制限されます。そのため、制限された権利に対して建物の相続税評価額を割り引いてくれるのです。割引率は全国一律で30%と決まっていて、これを借家割合といいます。
また、賃貸用の土地は貸家建付地と呼ばれ、こちらも相続税評価額が割り引かれるのです。借家権と同様に土地にも借主を保護する借地権があり、土地も貸し出すことで所有者の権利が制限されます。そこで相続税評価額を割り引き、貸主にもメリットがあるようにするのです。割引率は借地権割合といい、地域によって異なります。

マンションを購入する

2つ目は、マンションを購入することです。ワンルームマンションやタワーマンションを購入することで、相続税対策につながります。一般的な賃貸用のワンルームマンションは、エリアによって異なりますが1部屋1,000〜2,500万円程度で購入することが可能です。
マンションを購入することで、相続税評価額は時価の3分の1程度に抑えられます。預金を1,500万円相続した場合は1,500万円すべてが課税対象になりますが、1,500万円のマンションを購入することで、評価額は3分の1の500万円となり、課税対象は500万円となるのです。人気エリアや駅直結物件など、人気のあるマンションの場合は時価と評価額の差が大きくなるため、より節税効果が期待できます。

不動産を相続時精算課税制度を使って贈与する

3つ目は、相続時精算課税制度を活用して不動産を贈与することです。相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の推定相続人である子や孫に対し財産を贈与した場合、限度額の2,500万円に達するまでは何度も控除できるという贈与税の特例です。
贈与した時点では贈与税がかからず、相続するときにほかの相続財産と合わせて相続税が課税されます。基本的には相続税よりも贈与税の負担が大きくなるので、相続時精算課税を使って生前贈与をすれば贈与税がかからず節税可能です。
相続税としていくら課税されるかは、贈与時の時価で計算されます。つまり、価値が上がることが見込まれる財産を贈与することで、大幅な節税ができるということです。

不動産による相続対策のリスクや注意点

まとまった資金がないと対策できない

不動産での相続税対策は節税効果が大きい一方で、投資額も大きいのが特徴。つまり、まとまった資金がなければ対策は不可能です。基本的に不動産を活用した節税対策は、資金に余裕がある場合に行うものと考えるとよいでしょう。

借金をしての対策にならないか

バブル時代には、借金をして賃貸マンションを購入することが相続税対策のトレンドでした。それはバブル時代に不動産の時価が高騰したことで、相続税の負担が重くなったためです。しかし相続税対策はできても、バブル崩壊後にマンションの空室が目立つケースが増え、投資費用を回収できず借金の返済に苦労したというケースが多くみられます。不動産の資産価値が高ければ相続税の節税と不動産収入の獲得を同時に叶えられますが、場合によっては借金の負担ばかり重くなってしまうこともあるのです。借金をしてまで無理やり不動産を購入することが本当に価値のあることなのか、一度考えてみる必要があるでしょう。

賃貸はランニングコスト面のリスクがある

購入したマンションを賃貸に利用するのであれば、あらゆるリスクを考えなければなりません。まず、賃貸では空き部屋があると家賃収入が減ります。また、銀行借入を行って賃貸マンションを購入する場合、返済期間は長くなりがちです。返済期間中に金利が上がると返済額が増え、負担になってしまいます。
ほかにも自然災害や家賃滞納のリスクがあり、あらゆるランニングコストがかかるのです。相続税を節約するよりも、賃貸マンションを維持するためのコストにお金がかかるという問題に発展することも考えられます。

相続対策の不動産が持つデメリット

相続争いを引き起こす可能性がある

相続税対策のために購入した不動産が裏目に出て、相続争いを引き起こすことがあります。遺産の中に不動産があると、相続争いが起こりやすいです。これは不動産が現金と異なり分割しにくく、評価方法も一定ではないため。相続争いを避けるために遺言を残すなど、事前の対策が必要です。

不動産を売却する

相続税対策にこだわりすぎず、持っている不動産を売却することで別の問題が勃発する可能性を避けられます。不動産を購入するのではなく、持ち家を売却すれば現金として保管可能です。現金は不動産と異なり均等な分割が可能ですし、老後資金に回せるため安心できます。

リースバック

持ち家を売却して長年住み続けた家を失うことが不安であれば、リースバックを利用するのがおすすめです。リースバックは業者に持ち家を売却して資金を得つつ、そのまま家に住み続けられる方法です。老後に家がなくなるリスクもなく、安心して暮らせます。

まとめ

不動産の活用は、相続税対策としてよい方法です。しかし、借金をしてまで不動産を活用するリスクがあるか、税金以外のトラブルを引き起こさないかなど、あらゆる点を考慮する必要があります。不動産をあえて売却して資金に変えることも1つの方法ですので、検討してみるのもよいでしょう。
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